クリスマスには赤い服を着たサンタさん、なんて何時から定番化したんだろうか。




「お兄ちゃんが赤い服着てるのって珍しいよね」
「確かにな」
「カイト兄っていつも青のものを身につけているもんね」
ミクが興味深そうにこちらを凝視し、レンやリンはミクの言葉に2、3回うなずく。


「そんなに変かなー」


俺は裾の白いふわふわの部分をつかみながら自分の格好を見る。


「変って言ってないよ!ただ、お兄ちゃんが赤い服を着ているからつい、ね」


俺の呟きを拾った(VOCALOIDだし当たり前か)のか、ミクが慌てて一言つけたす。


皆さんおわかりであろうが、俺は今いわゆる”サンタクロース”の格好をしている。
確かに俺のイメージカラーは”青”だろう。髪は言うまでも無く、服やマフラーそれにパッケージまで青である。
それに付け加え俺と同じ型であるもう一人のVOCALOID”MEIKO”のイメージカラーが”赤”であることからそれは余計に強調されるのはわかる。


だがしかし。そんな俺がイメージカラーである色とは正反対の色を身に纏っただけでこんなに興味深くしかも凝視されるものだろうか。



「あら、どうしたの?」
俺が色々と考えているうちにメイコが支度を終えたらしい。


「やっぱりお姉ちゃんは赤が似合うね!」
「・・・そのスカートきわどくねぇ?」
「レンのスケベー」


確かにレンの言うとおりきわどい。
その丈はやばいだろ馬鹿マスター。っていうか一体何処から、いや、誰から入手した。
・・・いやいやいや。
ごほん、とわざとらしく咳をして思考を”正しい方向”に引き戻した。
彼女が身に纏うのは赤。スカートとズボンの違いさえあれ、俺と同じサンタクロースの服である。
しかし、それは彼女が着るとそれが”当り前”になる。


では、彼女が”青”を着るとミクたちは今の俺を見たような反応をするのだろうか。
それとも彼女は鮮やかに着こなしてしまうのだろうか。


俺の取り留めない思考は腕を引っ張られる衝撃と耳元で聞こえてきた声にいきなり断ち切られる。
「ちょっとカイト、ぼーっとしてないで。ミクたちにプレゼント渡すんでしょ」


俺が慌てて担いでいたプレゼントを渡したのは言うまでもない。








気付いたらすでに時間は10時をまわっていた。
明日は、朝から晩まで年少組には仕事が入っている。
そろそろ充電―人間で言うと睡眠にあたる―をしないと持たないかもしれない。


「ほら、そろそろ切り上げるわよ」


私の一言で皆のそのそと片付け始める。
一通り片付け終わった部屋は、先ほどまでのパーティの空気など残さずただの日常を紡いでいるだけだ。
はしゃいだその名残は私やカイトの服とミクたちに渡したプレゼントぐらいで、少し寂しくなった。


明日ににある私やカイトの仕事は午後からなので、着替えももう少しあとにして―少しぐらい”クリスマス”に
浸っていたかった―ゆっくりしようとソファに座ったとき、私は目の端に映った光景に首をかしげた。









ミクが俺の襟を思いっきりひっぱた時には何事かと思った。
リン・レンに続きミクも二階に上がるのかと思い、にこやかにお休み、と言っていた俺の顔は一気にゆがんだ事だろう。
ただ、すぐさま耳元にささやかれた言葉で首の痛みは忘れてしまったが。






ミクがお休みといって出て行った後、私はすぐさまカイトに駆け寄った。
いや、変な音がしそうなぐらい引っ張られていた首の心配をしたわけでない。
カイトがミクに何かささやかれてからカイトの表情が驚愕に染まり、そしてそのまま固まっていたので気になったのだ。


「カイト、カイト、何言われたのよ」


だから。だから私は彼の驚愕に染まったまま固まった顔を真正面の下から―残念ながらカイトとは頭一つ分の身長差がある―見上げて声をかけたのである。






ミクは空気読めない子なのか?・・・いや読める子か。
なんでこんな時に気付かせる。
気付かないようにしていたのに。
わからないフリをしてごまかしてきたのに。


ふ、と気付けば彼女が目前にいる。
・・・なんて事だ。


あぁ、目の前がくらくらする。



「カイト、どうしたの?」


何回呼びかけても答えない俺に業を煮やしたのか頬をぺちぺち軽くたたかれる。






ミクのその言葉はただのきっかけだ。
そのきっかけでごまかし続けた”無意識”は完全に”意識”に成り。







(お兄ちゃん、頑張って。チャンス、だよね)










―あぁ、俺はもう耐え切れない。








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