「はなしてっ!」
つかまれた左手首が痛む。
(―いつもだったらこんなことぐらい)
目の前がぼやける。なんで振りほどけないのか?
悔しくて唇を噛む。どうして今日に限って気付くのか?
「めーちゃん、理由を話してくれるまで話さない」
どうしてこの子はこんな真剣な目を向けてくるのか?
「なんだっていいじゃないっ!あんたは何も言わず手当てをする!
言いたくない事を無理やり言わせる気!?」
つい、きつい言葉を放ってしまう。
それが彼の瞳のせいだなんて絶対に知られるものか。
・・・もしも気付かれたら私は
「めーちゃん・・・・・・メイコ」
それでも彼の声は静かで。
「・・・っ!やめてっ!」
「!?めーちゃ」
「嫌っ!」
彼は叫んだ私に驚いたのかなだめようと手を伸ばす。
しかし私にとってはそれは恐怖でしかなかった。
もし。もし、その手に腕に捕まってしまえばもう二度と戻れないような気がして、私は必死でソレから逃れた。
「なんでほっといてくれないの」
私はもうぐちゃぐちゃだった。
思考はもとより、どうやらやっかいなことに私の瞳から涙が流れているらしく零れ落ちたしずくが赤地のスカートに濃いシミを作る。
「なんで私を”MEIKO”のままでいさせてくれないのっ!?」
”MEIKO”は常に強くなければいけない。
それは私が私であるための条件でもあり、常に要求されてきたことであった。
それなのに、今の状態は何だ!
情けない、情けないにもほどがある。
顔がますますゆがむ。
一瞬思考に沈んでしまった。
そのせいだろうか。
ふわり、と何か暖かいモノが私の頭を抱えるように覆いかぶさるのに気付いた。
「!?い、いやっ」
予想もしない出来事に私はパニックを起こし酷く暴れた。
でもソレはまったくびくともとせず、私をますます私でなくした。
「心配もさせてくれないの?」
ささやかれた耳が熱い。
言葉も出せず顔を赤くしてパクパク口を動かすだけになっている私をみて
酷く寂しそうに彼は笑った。
「めーちゃんはさ、いつも僕を守ってくれた。
もちろん、リンやレンそれにミクも。
めーちゃんはいつもみんなのヒーローだったよね。」
私はおとなしく彼の腕に収まってただその言葉に耳を傾ける。
「でもさ、めーちゃんは?
めーちゃんを守るのは誰?」
「よければ、その・・・・その役目を僕が引き受けてもいーい?」
ねぇめーちゃん、という声が呆けている私の耳に届く。
どうやら私はもう二度と”MEIKO”には戻れないようだ。
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