俺が俺になったあの時のことはよく覚えてる。





暖かい場所





ゆっくりと目を開けたらそこは白い空間だった。


俺はすぐにここがマスターのパソコンだという事を理解した。

どこを見回してもただ白いその空間は何だか落ち着かない気分になる。



「KAITO」


長い間一人で居たような気がするが、実際はインストールされてすぐの事だったのかもしれない。

ぼんやりとしていた俺は、後ろから誰かに声をかけられた呼びかけにすぐには反応できなかった。


「KAITO、KAITO!」

「!?」


大声で呼ばれ後ろを振り向くとそこには真っ白な空間に四角いウインドウが浮かんでいた。

その四角の中には優しそうな雰囲気をかもし出している青年が映っている。


「起動時間が長いから何か起こったと心配したよ。」


俺のマスターとなる人だろうその人は安堵した表情で俺を見ていた。






目の前の人物がマスターだと認識してから緊張で手が震える。

俺をこの先歌わせてくれる人と対面しているのだ。

最初のあいさつは絶対に失敗したくない。


「初めましてマスター、俺はVOCALOIDcrv2のKAITO。

マスターが思い描く歌を歌わせていただきます」


vocaloidのくせに声が微かに震える。


「これからよろしくお願いします、マスター」

「丁寧なあいさつをどうも」


マスターの言葉に含まれた感情に気がつき、お辞儀をしていた頭をぱっとあげる。

表情をみるにどうやらマスターは苦笑しているらしい。

……何か俺は変な事をしてしまったんだろうか。


「おっとすまんすまん」


俺が沈み込んだのがわかったのか慌ててマスターが謝罪する。


「いやー……今家にいるボーカロイドたちはそんな風に丁寧におれの事扱ってくれないからさー」


へ?



「そのうちお前もそうなるのかな……」

「えっと、マスター……?」


なにやらマスターは遠い目をしている。

何回か呼びかけてみたが反応は返ってこない。

…………。

どうやらマスターの所持するパソコンには他にしかも複数のボーカロイドがいるようだ。

一応マスターは至上の存在として認識されているはずだが……。

なんだか他のボーカロイドたちと仲良くなれるか心配になってきた。






「あー、とにかくカイト」


どうやらやっと現実に返ってきたらしいマスターがこれからについて考え込んでいた俺に声をかける。


「これからよろしく頼むな」


マスターの笑顔がキラキラと輝いて見える。

俺はこれからこのマスターのもとで歌うのだ。


「よろしくお願いします」







これから先、俺がどう扱われるのかはわからない。


けれどもこのマスターのもとなら楽しい生活が送れると思った。













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